「的に当てる楽しさが上を目指す原動力に」

―競技を始めたきっかけは。

　小学生のころ、2012年のロンドン五輪でアーチェリー女子団体が銅メダルをとったのをみて、やってみたいと思いました。当時住んでいた大阪市内にあった教室に行ってみて、的に当てる楽しさを感じて本格的に始めました。

　中学校は陸上部に所属しながら、週1回程度、教室に通っていました。もっと上を目指したい、上手な人と競い合いたいと思い、高校は強豪の私立星翔高校を選びました。

―高校時代、どんな練習をしていましたか。

　とにかく矢を射っていました。試合では的まで70メートルありますが、練習場は50メートルしかなかったので、的を通常よりも上に設置し、常に試合をイメージしながら的を狙う練習を繰り返しました。2年生で出場した2018年3月の全国高校選抜大会の女子個人で優勝、最終学年の3年生では、同年8月のインターハイにも大阪府代表として9位の成績を収めることができました。

―日本体育大学に進学されました。

　部員は約40人で同級生は男子6人、女子5人。レギュラー争いも厳しい環境に身を置きました。ウエイトトレーニングを取り入れたことで力が付き、弓の強さ（弓を引く力）が高校時代の38ポンド（17.2キログラム）から40ポンド（18.1キログラム）になり、矢が風に流されなくなりました。重要な大会として6月に開催される全日本学生王座決定戦には、毎年選手として出場することができました。2年生の時にはインカレで3位になることができました。

※1ポンド＝約0.45キログラム

「急に弓が引けなくなった」

―その後はどうでしたか。

　3年になって、急に弓が引けなくなりました。急に弓を射ることが怖くなり、的を狙うことができなくなって、初めてアーチェリーが嫌いになりました。部のメンタルコーチにつきっきりで指導してもらい、まずは5メートルの距離からゴムの弓で打ち始め、少しずつ距離を離していきました。マインドフルネス（めい想）も取り入れ、欲を出さないような精神状況をつくる工夫をしました。とにかく大学時代の4年間、アーチェリーを続けたい、試合に出たいという気持ちで続けました。

「インターハイで優勝できる選手を育てたい」

―島根県の教員という道を選びました。

　競技は大学卒業に合わせて辞めるつもりでしたが、大学3年のスランプが心残りだったので、もう一度、ちゃんとアーチェリーに向き合いたいという思いがありました。一方、体育の教員になりたいという思いもあり、島根県で教員という道を選びました。

　アーチェリー部がある出雲工業高校に赴任し、顧問を務めています。島根県内では子どものころにアーチェリーに触れる場がないので、ほとんど全員が高校生から競技を始めることになります。生徒たちには基本の動作から教えています。専門用語も分からないので、かみ砕いて説明するように気を付けています。まじめに一生懸命練習する部員ばかりで、インターハイに出場する部員も出てくれています。将来的には全国の舞台で優勝する選手を育てたいです。加えて、高校卒業後も競技を続けることができる環境を整えたいと思っています。アーチェリーは高齢になってもできる生涯スポーツですので、高校時代に一生懸命取り組んだ競技をあきらめなくてもいいようにしたいです。

「練習を工夫し、選手として全日本出場へ」

―選手としてはどうですか。

　指導者がいなくなり、自分でやるしかない環境です。生徒に教えた内容を自分でもやってみたり、大学の同期に自分が射る動画を送ってアドバイスをもらったりと工夫しています。教員になって部員に指導することで、競技を客観的に見ることができるようになったように思います。来年2月と6月の全日本出場目指して頑張っていきます。

（2023年11月取材）