膳棚 夕陽膳棚 夕陽
オリンピアンの夫の故郷へ
島根で見つけた、新たな目標

膳棚 夕陽

YUUHI ZENDANA
選手・指導者競技:ホッケー
東亜道路工業中四国支社島根営業所
成年女子ホッケー「島根クラブ」所属
ホッケー

―ホッケーを始めたきっかけは。

 私の出身地の滋賀県米原市では昭和56年のびわこ国体を機にフィールドホッケーが盛んになりました。スポーツ少年団活動として、小学5年生のときに始めました。当時は遊びの延長のような感じで、友だちのほとんどがホッケーをしていたこと、大会や遠征で県外に行くことができることも魅力に感じました。


―全国レベルの強豪である伊吹山中、伊吹高、天理大から実業団4強の奈良・南都銀行と進み、エリート街道を歩まれてきた。打ち込むようになった理由を教えてください。

 中学2年のときの練習試合で、部活の先生に褒められた経験が大きいです。すごく厳しい先生でしたが、練習を重ねていた連携プレーが実践のなかで決まり、試合中に「よし」と。褒められたことがとにかくうれしくて、それまで以上に努力するようになりました。結果もついてきて、その年中学総体で全国3位、冬の大会で全国優勝を果たしました。勝利体験もあってホッケーがとても楽しくなって、日本一、日本代表を目指すようになりました。

 

 

―競技人生で苦労したことを教えてください。

 高校ではインターハイ2連覇しましたが、大学1~3年は2、3位にとどまり、日本一の目標はなかなか叶いませんでした。4年のときはキャプテンとして強豪だったため常に結果を求められ、自分自身もプレーの面で信頼されるパフォーマンスをしないといけないというプレッシャーとともに、チーム全体を考える役割の重責に苦労しました。この年も2位でしたが、今振り返ると必死にもがいたこのときの経験があったからこそ、相手の気持ちを考えることや責任感が培えたと感じています。


―現在は島根県奥出雲町在住。島根とのご縁は。

 奥出雲町は夫の故郷です。夫はホッケー強豪の横田高校出身で、日本代表として東京五輪を戦った後、故郷で中学校の指導をすることになり、2022年に家族で移住しました。実業団を辞めた後も地元「滋賀クラブ」の選手として競技を続け、今は島根県の成年女子チーム「島根クラブ」に所属しています。


―島根県のトップアスリート県内就職支援事業を活用して2023年4月、東亜道路工業中四国支社島根営業所に入社された。

 親身になって相談に乗っていただき、安心して就職活動することができました。今の職場の決め手は自宅から近いことと、ホッケー場の施工にも携わっていると聞き、非常に身近に感じたことです。職場の雰囲気も良く、何よりホッケーに対する理解、仕事と競技の両立に理解があり、入社を決めました。

 

 

膳棚選手


―職場環境について教えてください。

 大会に出場するときは数日休むことになりますが、普段の練習や大会などのスケジュールに融通をきかせてもらえます。大会で良い結果を残すことは会社のPRにもつながるため、競技に対するモチベーションもアップします。道路という社会インフラを担う仕事で、やりがいもあります。アスファルト合材の品質管理業務を担当していますが、出荷準備や重機準備、工場試運転、お客様への電話確認、出荷作業、現場など日々の業務は多様です。1歳と3歳の2人の子どもがいますが、夫の両親と同居しサポートしてもらえるのもありがたいです。


―現在の内容は。

 「島根クラブ」の週末の練習に参加しています。平日夜と週末に地域のスポーツ少年団の練習にも指導者として参加しています。自主練習としてランニングや筋力トレーニングも時間がある時にするようにしています。島根クラブの練習は主に横田高校女子ホッケー部との試合形式です。8回の全国制覇を達成している強豪校。約20人のクラブメンバーも同校出身者が多く、とてもいい練習ができます。


―島根の練習環境は。

 奥出雲町内の三成公園には、人工芝の立派なホッケー場があります。当社が施工を手掛けたもので、小学生、中学生、高校生、社会人、マスターズという幅広いカテゴリーの中に誰でも入ることができるとてもよい環境です。練習場に子どもたちを連れていくこともありますが、3歳の長女は「自分もホッケーやりたい」と言うようになりました。


―あらためて競技の魅力を教えてください。

 フィールドホッケーは、ルールが比較的分かりやすいスポーツです。まだまだマイナー競技ですが、実際に見てみるととても面白いんです。一流選手が放つシュートは時速160kmを超えることもあり、片面しか使えないスティックさばきが非常に見応えがあります。オフサイドがない競技なのでスピーディーで、スルーパスが通った瞬間は「よっしゃ」という気持ちになります。ぜひ観戦してほしいですし、お子さんには体験してほしいですね。

 

―スポ少指導者としての思いは。

 男女20人の子どもたちが参加しています。試合に勝って大喜びする姿も、負けて泣いたり悔しがる姿も、どちらも真剣で、自身の初心を思い出します。まず楽しく、けがをしないようにと心掛けています。町の人たちがホッケーに対して“熱い”ところは滋賀ととても似ています。熱烈に応援していただけるのは励みになります。

 また、奥出雲町に移住した時、ホッケーの繋がりのおかげで孤独には感じませんでした。マイナースポーツだからこそ、全国に繋がりができるという魅力も子どもたちに伝えていきたいと思います。私自身、指導してくれた恩師たちがいたからこそ、今の自分があると言い切れます。感謝の気持ちを込めて、ホッケーを通して町のホッケーの活性化に努め、恩返ししていきたいです。


―今後の目標は。

 仕事をしながらも競技を続けることができる環境に感謝し、大会で結果を残して、会社に貢献していきたいという思いが強いです。島根の成年女子の全国制覇はまだないので、国スポ、社会人大会での全国優勝が目標。島根かみあり国スポ・全スポが開催される2030年は38歳。島根クラブのチーム存続のためのサポートや、ターゲットエイジになる選手たちの育成にも努め、選手として、指導者としてフィールドホッケーの部で4種別優勝を狙いたいです。

(2024年1月取材)

中鉢所長と膳棚選手

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中鉢 和宏所長

 

東亜道路工業中四国支社島根営業所

中鉢 和宏 所長

 



東亜道路工業とはー

90年にわたって道路を中心とした社会インフラ整備に携わり、化学と土木の両面から日本の発展に貢献してきた。スポーツ施設の建設でも豊富な実績がある。

 


 

―アスリートのU・Iターンを促す島根県のトップアスリート県内就職支援事業を活用して2023年4月、膳棚さんを採用された。


 人材確保に苦慮する企業側にとってもありがたい制度です。道路舗装や舗装材料製造を手掛けていますが、古くからスポーツ競技施設の施工も数多く行っています。事務所は、ホッケーの町である旧横田町にあり、ホッケー場の建設工事にも携わっているので、スポーツ競技者との親和性も高いと思います。何かお役に立ちたいという思いで、この事業に応募しました。

 

 


―膳棚さんの仕事ぶりは。


 アスファルト合材の品質管理業務を担当していますが、担当業務だけでなく製造や機械の保守業務にもチャレンジしており、期待以上の働きをしてくれています。競技力向上を目指す試行錯誤やガッツ、行動力、探求心、粘り強さなどアスリートが持つ能力やスキルは、一般社会で活躍できるスキルだと思います。長年厳しい環境で鍛えられた精神力・一生懸命さを存分に発揮されています。また、雇用する側としては、近年の働き方改革の一環で業務ローテーションによる休暇取得の励行、および時短勤務制度に取組んでおり、普段の練習や大会に影響がでないよう配慮しています。

 

 

 

―職場に与えた影響、今後の展開は。


 集団競技をされていたことからコミュニケーション能力が高く、すぐに職場にも慣れたようです。一生懸命さが職場の士気を高めています。島根かみあり国スポでの活躍を期待するとともに、競技人生を終えても長く勤めてもらいたいと考えています。

 

 

中鉢所長と膳棚さん


(2024年1月取材)

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